愛と怖れ

許すという行為は、あらゆる苦悩と喪失感に終止符をうつ。

(ジェラルドGジャンポルスキー『愛と怖れ』)

 

許すことの難しさ。

 

日々の些細なことから、人生を狂わせる大きなことまで、生きていれば常に、許しを迫られることがある。

 

仕事上のミスや友人との軽い喧嘩ならまだいい。しかし家族のこととなると、それは一筋縄ではいかない。100の家族には100の悩みがあり、誰かが誰かを許さないと解決しないことが多々あるからだ。

 

僕もその一人だ。30年もの間、父親を恨み続けていた。

 

酒を飲んで暴力を振るう、女を作っては家に帰らず、金も入れない。困った時だけ帰ってきては偉そうにしている。外で子供を作っては離婚を繰り返し、その後の面倒も見ず、責任は一切とらなかった。

 

一歳で母親と離婚したので僕は祖母に育てられた。貧しい暮らしだったが、祖母の愛情に包まれて幸せだったと思う。父親さえいなければ。

 

それで30年。ずっと恨みを抱えて生きてきた。若い頃は反面教師にしていたが、やがて僕の人生も父親と同じような道を辿っていた。血の繋がりを呪った。

 

酒を飲んで、たくさんの女性に迷惑をかけた。喧嘩っ早かったが、直接的な暴力をパートナーに振るうことはなかった。ギリギリで立ち止まれた。そして一度も結婚せず子供も作らずに今がある。

 

事あるごとに自分の家庭環境を呪い、何万回も頭の中で父親を殺していた。

 

 

数年前に、『家族の人生は家族のもの、あなたの人生はあなたのもの。切り離して考えていい、抱えなくていいのです。』というような文章を読んでハッと目が覚めた。

 

いつまでも父親の人生を自分の内部に抱えている必要はないのだ!!

 

血が繋がっているという理由だけで、父親という存在に縛られることはないんだ!!

 

父親の人生は父親のものだから、俺が抱え込む

義務はないぞ!!

 

そう気づくことで、少しづつ気持ちを軽くしていきました。そして2年ほど前に、ようやく父親を許すことができたのです。

 

 

それからというもの、父親のことを考える回数は減りました。今までは苦手だった『両親がいてちゃんと育てられた人』に対しても、過剰な敵意からつい攻撃してしまうこともなくなりました。

 

それからです。結婚や子供にまつわる出来事が身の回りに増え始めてきたのは。

 

結婚したら子供を作らなければならない。その恐怖から、たとえ結婚話が持ち上がっても、自分で壊してきた人生が少しづつ好転していきました。

 

父親の呪縛に囚われ続け、間違った人生を歩んできた自分。その苦悩がなくなりました。そして両親からの愛情を得られなかった喪失感も消えていきました。

 

中年も後半に差し掛かった年齢のいま、遅すぎるくらい遅いのですが、ようやく自分から始まる家族を持ちたいと心から思えるようになったのです。

 

 

許すこと。それが自分を生き始める第一歩です。人それぞれ苦悩があると思いますが、少しづつでもいいので許していくこと。

 

なぜもっと早くできなかったのかと今は思うばかりです。

 

 

 

愛と怖れ―愛は怖れをサバ折りにする。

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愛とは、怖れを手ばなすこと (サンマーク文庫 E- 45)

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