恋愛の限界を決めるのは誰か

恋愛が2人だけの宗教なら、アナタは信者じゃなくて神にならなければなりません。神様は厳しく暖かい。神様になるのって大変だよね。(秋吉久美子『ドレスの下に』)

 

映画『インターミッション』に主演したときの秋吉久美子はカッコよかった。パリっとしたホワイトのシャツに黒のパンツ、すっと背筋が伸びていて、実際の身長より高く見えて完璧な佇まいだった。超歳の差夫婦役である染谷将太とのからみもエロティックで、やっぱり女優としての彼女が大好きなんだなと再確認した。この時彼女は59歳である。後から知って驚いた。


引用した彼女のフレーズは女性側からのメッセージだと思うが、男性から見れば、何ともハードルの高い要求だなぁ…と思うと同時に、まあでもその通りだよねと納得せざるを得ない説得力がある。神様になれと!


恋愛はいくつになってもできる。おそらくそうなんだろう。頭ではわかっていれど、現実には想像が追いつかない。今の僕の歳から考えれば、例えば60歳と70歳のカップルは想像できない。夫婦なら想像できるけど、その歳の恋愛というものがどういうものなのかイメージがわかないのだ。


20代の頃の自分は、40代の恋愛なんて想像できなかった。若い自分たちのように中年の男女がいちゃいちゃしてたり愛の言葉を交換し合うことに気持ち悪さを覚えていた。ビジュアルの問題、センスの問題、絵面の問題…恋愛は若いからこそ様になるんだろうが!なんて考えていたのだと思う。


そして年月が経って、現在の僕はもう40代の半ばだ。昔の自分から見たら、『お前まだ生きてんの?ダセェな。』のひと言で終わるだろう。


『ああ、生きちゃってるよ、しかも恋人もいるよ。お前が気持ち悪がっていた連中と同じく、好きな人と触れ合ったりもしてるよ、ゴメンね。でもこれも案外いいもんだぜ。』


相談の多くは恋愛にまつわることだ。


彼氏が欲しいの…異性の友達が欲しいの…もっと大切にして欲しいの…あたしが一番じゃないと嫌で…不倫相手じゃないよ彼氏だよ!


いつからだろう、不倫相手を彼氏って呼ぶようになったのは?


年齢も20代から60代くらいまで、様々な女性の相談にのっている。


どの範疇を恋愛ととらえるかはその人次第だ。並んで歩くことが天にも昇る気持ちになる女性もいれば、例えどんなに言う通りにしても、自分の予想を裏切ったカッコよさを見せてくれないと満足しない女性もいたりして。基準なんか無いに等しい。ステイタスもお金も美醜も環境も関係なくって、その人が満足するのが一番の望みだ。


この歳になってもやってる恋愛に変わりはない。自分が年齢を重ねるにつれて、若い人は増えていく。それはすなわち比較対象が増えていくということか。


であるならば、若さと比較しているうちは恋愛もその本領を発揮できないだろう。減点方式になっちゃうからね。


歳をとるごとに、その恋愛は、減点方式から加点方式に変えるべきだ。あとはたくさんの扉を用意すること。外の世界と2人の世界、社会性とユニット性を行き来するドアをたくさん準備して、パタパタと出入りする。社会の中に在る2人と、ユニットでいる2人を器用に横断していくこと。これがバランスなのだろうな。


カッコよい神様になるにはもっと努力しなきゃならないだろうが、少しづつ積み重ねているうちに気づけば60代になっている。その時『まあまあじゃない?』なんていうセリフをパートナーから貰えれば、ひとまずは良しとしよう。


男性でも女性でも。歳を経てなおカッコいい、チャーミングである。それが理想だと思います。お互いがそう思えたら素晴らしいですね。

 

 

ドレスの下に

ドレスの下に

 

 

 

インターミッション [DVD]

インターミッション [DVD]